マンガ制作のリモート環境を公開します

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現在発売中の書籍『マンガでわかる製図試験』は、総勢5人のアシスタントさんと作業を進めました。しかも対面一切なしです。

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住居がバラバラでも、活動時間が違っても問題なく働けるリモート環境について、自分の備忘録代わりにメモしていこうと思います。めちゃくちゃ長いです。

1.全体の概要

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全体の概要はこんな感じです。コツとしては、原稿のオリジナルデータはアシスタントさんに触れないようにしていました。テーマは「好きな時間に好きな量を作業できる」「アシスタントさんにカット作成以上の責任を負わせない」「ミスはもとから断つ」の3つです。

2.労働条件や働き方

アシスタントさんとはいえ、専任で雇っているわけでもないですし、みなさんそれぞれの生活があります。そのため「自分達の生活を優先して」「好きな時間に好きな量だけ作業できる」ことを優先としました。

  1. 時給制
    謝礼は時給制としました。1カットいくらだとNGを出すだけアシスタントさんの損になるし、難易度に応じて単価を設定するのが難しかったというのもあります。マンガのヘルプアシスタントとしては単価も悪くない額を提示できていたと思います。

  2. 期間を明示
    終わりが見えない作業は人のやる気を失わせますし、次の仕事を探すチャンスを奪うことになります。何月から何月までと取り決めしました。

  3. 時間拘束無し
    当然シフトもありません。各自働けるときに働きます。アシスタント5人中5人が他の仕事を持っていますし、3人は育児の真っ最中です。空いた時間に仕事をし、実働時間を連絡してもらう形としました。

  4. 担当作業
    背景作画、仕上げ(トーン、ベタ、その他演出)、原稿チェック等。作品の最終責任は僕だけに負担させるようにしました。当たり前ですけど、なあなあにしないことが大切かと。

  5. 働き方
    作業開始時にグループLINEに連絡

    割り振られた作業内容を確認し、必要データをダウンロード

    作業(中断自由)

    その日の作業終了時にその時点のデータを日別作業フォルダに共有

    グループLINEに作業終了を連絡

    個人LINEのノートに実働時間を記録

3.クラウドはDropbox

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別々の作業場で別々の時間帯に作業するにはオンラインクラウドは必須です。汎用性や人気から「Dropbox」を使用しました。個人用は1000円強/月で2TBまで使えるので、モノクロ原稿100ページ程度なら何の問題もありませんでした。各アシスタントさんへの費用は作者負担なので、人数によってはファミリープランを使ってもいいかも。

4.作業連絡ツールはグループLINE

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「誰もが使い方を知っている」という点でこれ一択でした。機能としてはslackが良いんだけど、誰もが使いこなせてるわけじゃないですから。いちいちツールの使い方を説明しなくていいというのはやっぱり強い。

主な使い道としては

  1. 作業報告、相談
  2. 勤怠記録

の2点ですね。ちょっとここは深掘りしていきます。

作業報告・相談はグループLINE

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日々の作業報告、相談が一番仕事量が多いです。LINEは画像にペン入れできるので作業環境にいない時でも指示しやすいのがいいですね。

他のアシスタントさんと知見が共有されやすいのもいいです。

ただ、毎日いつでも誰かが作業しているので、作者の確認作業は一日中発生し得ますし、作者がチェックをサボると作業が止まります。

勤怠記録は個人トークのノート

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お礼は時給としていますので、勤怠管理が必要です。とはいえ作業開始時と終了時に「作業します/終わります」とグループLINEに投稿し、作業時間を記録するという簡潔なものです。ご自身の時間を優先してほしいので、途中退席に連絡は不要としました。

勤怠記録は個人トークで「勤怠記録」というノートを作り、そこに勤務時間をコメントしてもらう形としました。また、個人作業フォルダは作業日別で作ってもらい、途中でも1日の終わりには作業データをアップし、作業時間の妥当性チェックとしました。

気心しれたメンバーでやっているので性善説で運営していましたが、一応性悪説の機能も入れることでバランスをとりました。

5.原稿データ管理の方法

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アシスタントさんにはオリジナルの原稿データを一切触れなくていいようにしました。これはうっかりミスをなくすためです。手順はシンプルで

  1. 作者が原稿データを閲覧制限フォルダに保存する
  2. 作者が原稿データを共有フォルダにコピーする
  3. アシスタントが原稿データを共有データから各自の日別作業フォルダへコピーする
  4. アシスタントが作業した原稿データを各自の日別作業フォルダへ保存する
  5. 作者が日別作業フォルダからベタ、背景、仕上げなどをコピーし、オリジナルの原稿データへペーストする

というものです。どうしてもコピー&ペーストが必要になるので、レイヤー構成をコピペしやすい構成にしておくと便利です。

6.作業割り振りと進捗管理の方法

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まず全ての背景に附番します。必要な属性は「通し番号」「エピソード番号」「ページ数」「コマ番号」「背景の分類」「担当アシスタント」「その他指示」です。

上のような図をLINEでアシスタントさんに送り、アシスタントさんは該当する作業データをダウンロードして作業を開始します。

作業データには背景の下書きや指示を入れておくとより作業効率が上がります。

また完了した作業を塗りつぶしていくと、なんとなくやる気が上がります。

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ちょっとわかりにくいですが、コマ別のキャラクターの立ち位置や向き、カメラの方向を指定しておくと作業効率や意思伝達が段違いに早くなります。

7.時給計算の方法

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時給は10進数との相性を考慮し15分刻み(端数切り上げ)としました。1時間15分なら1.25で、これに時給を掛けるだけでいいので管理がとてもしやすいです。

まとめ:管理は大変だけど作業ノウハウが蓄積できる

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以上、駆け出しマンガ家としてはかなり面倒なことをしましたが、もともとがプロジェクトマネージャーという仕事をしていたので苦ではありませんでした。むしろ僕よりレベルの高いマンガ家さんたちと仕事をすることによって得られることの方が多かったです。

現在僕の手元には全背景リスト、各人の総作業時間、支払情報などがあるため、背景の単価やページあたりの平均作業時間を割り出すことができます。

今回のような企画本の作業をする際の非常に有益なデータが取れたと思っています。

何よりやっぱり僕は好きな人と好きな仕事をするのが楽しいんだと実感できました。

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