こんにちは!一級建築士でマンガ家のヒヅメです!
前回僕は、平成30年の一級建築士設計製図試験課題「健康づくりのためのスポーツ施設」の標準解答例1を『マインクラフト』で再現しました!
そして今回はもう片方の標準解答例2を再現しました!今回は標準解答例1との違いや「なぜ標準解答例2が作られたのか」を解説してみようと思います!
前提条件
前提条件は前回と同じだけど大切なことだから2回言うね!
- 一級建築士設計製図試験の勉強を進めている前提とする
- 試験問題の立体的イメージを掴んでもらうことを目指す
- 数的なポイントやその年の特殊な諸条件については解説しない
- 標準解答例の図面および問題文は用意しない
※複製・配布禁止になってるから。
※試験元HPなり資格学校なりで手に入れてね!
細かい説明はしないよ!そういうのは総合資格とか日建学院とかTACとか独学系とかでちゃんと頑張るべし!
敷地および周辺条件
敷地と周辺条件は前回と同じだから前回の記事で確認してね!
建築物
外観

パッと見は標準解答例1と似た西側アプローチのプランです。つまり「西側のアプローチ無しは大減点」というのが分かりますね。

標準解答例1との大きな違いは主に2つ。1つ目は、凹凸の無い総3階建てで整形な構造ということ。2つ目は、北側にも利用者アプローチがあるということ。これによって北側駐車場からのアプローチが短く分かりやすいものになりました。
全体プラン
1階平面図・配置図

- 玄関で下足を履き替えるプラン
- プール2階プラン
- 西と北からのアプローチ
- 共通更衣室が1階にあるため3階施設の利用者にとっては利便性が悪い
2階平面図

- 各施設への身近い経路
- プール下にプール用配管を通す資格学校御用達プラン
- プール用機械室を真下に配置する理想プラン
- 各階の共用部をつなぐ理想的な吹抜
3階平面図

- エレベーターの前が左右につながる廊下になっていて、分かりやすいプランとは言えない
- こちらも面積余りを感じる
※ホールと休憩コーナーの違いが曖昧だし休憩コーナーが貧相
断面図

- 「立体構成」とはこういうこと
吹抜が各層につながっている感じ、トップライトの採光感、見学コーナーの横つながり感等 - 標準解答例1と同じく地下水位を避けた基礎の根入れ深さ
- 上部に重量物が配置されない基礎部分には土間コンクリートを採用
※基礎部分は後で詳しく解説します。
1階
エントランスホール

- 玄関で靴を履き替えるプラン(スーパー銭湯みたいな)
- コーナーに配置することで北・西出入口への視認性に配慮したフロント
※実際には北側への視認性は悪いが「配慮はしてますよ」という体 - 余裕があり明るい下足コーナー
毎度ながら致命的なケチはつかねえプラン。そうそう、これでいいのよ。
カフェ

最も人通りの多い桜並木に2スパン使って配置。この試験でカフェとは利用者と建築物をつなげる施設として使われることが多いですよね。
この年では「敷地内の利用者」とこの建築物をつなげる役割をはたしています。そのため両標準解答例でも桜並木(この敷地全体で最も人通りの多い道路)に向けて配置していますね。
吹抜

お手本のような吹抜だけど、実は人が集まるエントランスホール中央には吹抜を設けてないいぶし銀の設計。それよりも利用者が施設に入った瞬間「わあ、明るくて広いなー」と感じられるプランなのよ。
コンセプトルーム

1階に配置したことで道路につながる敷地内通路を設けていること。慣れていないと忘れがち。

各施設が遠いのがイマイチなんだけど廊下がまっすぐなのは良いね。「突き当りがコンセプトルーム」、「右手にキッズルーム」っていう具合に受付カウンターで簡単に説明できる。
2階
エレベーターホール

こちらもまっすぐ。悪くない。プール用更衣室に向かう廊下を幅広にしてあるのも「人の主要動線はこっちですよね、分ってますよ」感を出していて良いね。配置の苦しさを廊下のシンプルさや太さでカバーしている例。
多目的スポーツ室

- 整形
- エレベーターホールから近い
- 西側には垂直ルーバーや壁面で日差しをカバー
- 北側からの安定した採光
- グラウンドや体育館が望める一体感
- エスキスはこの室でスパンを決めて、そのスパンの中でプールが入るなって順番だったのかな
…と、こんなとこかな。利用人数が多い施設は出来るだけ近い動線(1階配置)という固定概念を避けたプランだね。普通に不便だと思うけど。
温水プール室

プールは法規的に注意する点が多いけど、ここでは立体イメージを掴んでもらうことにフォーカスします。


空調ダクトスペースと配管ピットについて見てみます。
赤い線が空調ダクト。プール真下にある機械室から直上にダクトスペースを配置。2階の壁面に吹出口を設けるタイプだと思われる。
青い線が温水プール用の配管ピット。プールサイド下にぐるりと配置してある。こちらもプール真下にある機械室から引き込む。
ダクトや配管がシンプルで短くなる理想の配置ですね。
3階
エレベーターホール

多目的スポーツ室の見学スペースも兼ねたようなプラン。左右に施設があって分かりやすい。高さのある2室を2階に置くことで建築物を整形にしつつ3階の面積余りをカバーするプラン。
トレーニングルーム

整形じゃなくても良い施設を見極めて、こうして綺麗にしわ寄せさせるのは試験だけじゃなく大切な技術だよね。
基礎


平成30年も地盤条件がいろいろ出てましたね。埋戻し土が地下1.8mまであるとか、2.2m以下には地下水があるとか。標準解答例1と2を見比べて分かる点をあげますと
- 地下水位無視はできない???
両プランとも基礎を地下水位より上に配置している
でも僕の知ってる限り無視した人でも合格している人はいる - 砕石は図示されていないけど忘れていないよね?
標準解答例では図示されていないけど「2mの根入れ深さに0.2m程の砕石を敷いても2.2m以内だよ」と言いたいんだと思う - 特別な負荷が掛からない箇所において土間コンクリートやマット基礎をコスト削減策として用いることができる
僕ならシンプルなベタ基礎とすることで施工手間やミスのリスクヘッジを優先させたいけど
まとめ

平成29年に比べると、標準解答例を2案出した意図が分かりにくいプランでしたが
- 最も人通りの多い道(桜並木)を無視したアプローチ計画は不可
つまり周辺環境を読み取れない人は平成29年に続いて落ちやすいことが分かります。だからマイクラで作ってんだけどね。 - 地下水位は避けるが吉と言ってきてる
2案とも地下水位を回避しているので普通なら「地下水位無視は不可」と言いたいんだけど、合格者もいれば実務上全然あり得るので「きちんと対処すればOK」なのだと僕は思う。 - 部分的なマットスラブや土間コンクリートはコスト削減策として可
ということが分かりました。
(本当は防火区画・竪穴区画や延焼ラインなどで「ん?」と思うところもあるんでうが、法規は沼なんでやめときます)
それではまた次回どこかでお会いしましょう!
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