一級建築士試験マンガをきっかけに試験対策についてもっと深堀りした情報をお伝えしようという本企画。
そこで一級建築士試験の独学系学習支援サービス「製図試験.com」の運営者である山口達也さんをお迎えし、僕のマンガにコラムを書いてもらいます!僕のマンガにゴリッゴリの試験プロが組み合わさることで直接的なノウハウやメンタルケア方法のような、マンガでは届かなかった部分までお伝えしていきます!
本日の Pick Up マンガ




※一級建築士設計製図試験|上達のポイントはトライ&エラーより。
失敗を恐れている当時のヒヅメさん

他のクラスメートが様々な作図方法を話合っている中、ヒヅメさんが「僕はこのままでいいかな」と決めつけている1コマが印象的です。もしかしたらトライアンドエラー自体に馴染みがないのかもしれません。
どうも「失敗したくない」という想いが強いのでしょうか。また「出来るだけ早く解答例のようになりたい」という効率主義な受験生も多いと感じます。しかしそれでは模範回答をなぞることへ意識がフォーカスしてしまい、それ以外の行動を悪いものと考えてしまいます。

トライアンドエラーの重要性

計画の重要性を問うあまり行動が軽視されているのかもしれませんが、物事を動かしているのは計画ではなく行動です。受験生で言えば学習計画よりも学習が大切なのと同じです。
とりあえずトライしてみる→エラーが起こる→問題点が明確になる→修正案を再びトライする。このトライアンドエラーのサイクルを回すことが試験期間中とても大切になってきます。

PDCAサイクルではない

似たような概念として「PDCA(「Plan=計画」「Do=実行」「Check=評価」「Action=改善」)」というものがありますが、トライアンドエラーとは大きく異なります。それは最初にPlanがあるからです。対してトライアンドエラーはまずDoで始まる。物事はまず行動から。まずは手を動かし試すことから始めてみましょう。

意図的に行う失敗「捨てプラン」のすすめ

製図試験.comのエスキース手法のひとつに「捨てプラン」があります。最初からまとめる意識を持たず、ざっくり要求室を配置(トライ)してみる。そうして問題点(エラー)を浮き彫りにした後、このプランは捨ててしまうので「捨てプラン」と呼びます。
捨てプランには2つのルールがあります。
- 「こうあるべき」で納めようとしない
- 成立させようとしない
というものです。なぜなら捨てプランは問題点を浮き彫りにするために行うので「当たり前だ」と思っていることも書き出していく必要があるからです。

例えば、3階に創作アトリエ部門、2階に展示部門、1階に共用部と管理部門を配置してみます。そうすると各階のボリュームバランスが悪いと分かった。利便性を考えれば1部門1フロアが理想的なのに試験問題の要求とズレてしまう。そのズレている情報(=問題点)を浮き彫りにしつつプランニングを進めていけば、階の振り分けも非常に楽に進めることができます。

あなたは生産者だということを思い出そう

それでもやはり「失敗したくない」と思う気持ちもあるでしょう。そこで思い出してほしいのは、一級建築士受験生であるあなたはモノを生み出す生産者になろうとしており、モノを作るには数々の失敗がつきものだということです。
本来、建築設計というものは無から有を生み出す業務なのですが、それには数限りない先人の失敗が積み重なっているのです。
先人の失敗した痕跡が見えない熟成された社会では、多くの受験生も消費者として暮らしていることがほとんどかもしれません。しかしあなたは生産者であるということを今一度思い起こしてもらえば、失敗も当たり前だと思えるでしょう。

受験生の今こそ「小さく短く失敗すること」をたくさん覚えよう

「失敗しろ」と言ってきましたが、実務では失敗が許されない環境の方が多いですよね(本当は失敗が大切なのですが)。ところが製図試験では2000m2級の建築物の基本計画を短期間に10本以上やるわけです。そして何度でもエスキースする時間を作ることができる。試験ほど失敗を練習できる機会はなかなかないわけです。
しかもできるだけ小さく短く細かく失敗できるように練習しておくと「とりあえずトライする習慣」も身につけられます。その延長線上に合格があり、またこの失敗体験が合格後最大の財産になることは間違いありません。

まとめ
製図試験の学習行程では、単に図面が上手くなるとか、エスキースが早くなるとか、そういう短期的な目標を通じて、生涯使える「トライアンドエラー」というスキルを学んでいるのだと私は思っています。