コルクラボマンガ専科の授業の中で『ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム(以下ベストセラーコード)』という書籍が紹介され、売れるストーリー(プロットライン)の多くは7つの型で構成されているということを学びました。
しかしながらこの書籍、いかにも洋書的な書き口でめちゃくちゃ分かりづらいんです。ただ読んだだけでは分かりにくいので、ここでは日本の童話「桃太郎」を用いながら実際にストーリーの型を再現してみようと思います。
ストーリーには型がある
『ベストセラーコード』ではベストセラー小説500冊、売れなかった小説4500冊のテキストデータを分析して、売れるストーリーに共通する7つのストーリー展開を導き出しました。その7つとは
- ブッカーの喜劇 厳しい状況から徐々に幸せに向かっていく
- ブッカーの悲劇 最後には希望があるも喜劇とは逆。主人公の内なる葛藤や欠点がストーリーの主軸となる。
- シンデレラストーリー 苦難と成功の間に大きな動きがある。
- 再生型・逆シンデレラストーリー 主人公が変化を経験し、生まれ変わる
- 旅と帰還 主人公は異なる世界に直面、試練を経験。克服して戻ってくる。
- 探求型 何かを探し求めて冒険する。未知なる場所でモンスターと戦い希望は打ち砕かれ冒険を終える。
- モンスター退治 ヒーローと悪役が登場。主人公が立ち向かい平和を取り戻す。
とのこと。ちなみに上記7つの名称は「イルカとウマ文学村」という文学サイトからコルクが引用したものっぽい。とても素敵な名称なので以下このまま用いさせてもらいます。
ストーリーは3幕で構成する
『ベストセラーコード』によると、物語の基本は最初、中間、最後の3幕構成になっており、それは古代ギリシアから現代に至るまで変わらないとのこと。よって、ストーリーの型を桃太郎で再現する際も3幕構成で書いてみようと思います。
7つの型を桃太郎で再現する
1.ブッカーの喜劇

厳しい状況から幸せに向かって徐々に進んでいくストーリー。
・状況が良くなろうとした中でそれを脅かす場面がいくつかある
・スタート地点より良い状況で物語が終わる
これを3幕構成にあてはめると以下のような内容:
- おじいさん、おばあさん、桃太郎はじめ村人たちは鬼の支配下におかれ苦しく貧しい生活を送っていた。
- 乏しい食糧事情の中おばあさんが作ってくれたきびだんごは、犬、猿、キジといった知力、武力、勇敢さに長けた仲間を集めるきっかけとなった。乏しい食糧を動物に分け与えることを良く思わない村人もいたが、犬、猿、キジの献身的な働きによって村人たちは徐々に心を開いていく。
- 村人たちからの支援を受け桃太郎たちは鬼ヶ島へ鬼退治に出かけた。無事鬼を倒した桃太郎たちは鬼の隠し財宝を村人たちと分け合い幸せに暮らした。
2.ブッカーの悲劇

ブッカーの喜劇と逆パターン。しかし最後には希望がある。
・主人公は誤解によって間違った決断をすることも多い
・主人公は厳しい状況や悲しい現実を受け入れる境地に達する
これを3幕構成にあてはめると以下のような内容
- 鬼が食料を奪うことで村人と桃太郎は貧困にあえいでいた。食料も不足し、誰もが鬼に逆らう気力も体力も尽きていた。桃太郎は残された食料できびだんごを作り鬼退治の仲間集めを始める。
- 仲間を集めた桃太郎は鬼ヶ島に行き鬼を殺す。しかし過去に村人たちが鬼を惨殺していた過去を鬼の子供から聞かされる。
- 桃太郎が持ち帰った金銀財宝により、村人たちは農作業を放棄し酒池肉林の生活を送る。青年となった鬼の子供が仲間を引き連れ桃太郎の元へ復讐にやってきた。桃太郎は自分たちの番が来ただけだと覚悟を決める。
3.シンデレラストーリー

苦難と成功の間にある大きな動きを描く。
・主人公はその後全てを失う
・主人公は絶望の淵から這い上がり幸せと平和のうちに物語が終わる
これを3幕構成にあてはめると以下のような内容
- 鬼を退治した桃太郎は持ち帰った金銀財宝をおじいさん、おばあさんに与え幸せな生活を送っていた。
- やっかんだ村人たちから強奪を受け、桃太郎一家は一文無しになってしまう。
- 再起をかけ犬、猿、キジとともに商売を始めた桃太郎のきびだんご店は大繁盛。幕府の献上品に選ばれ何不自由ない生活を送った。
4.再生型・逆シンデレラ

主人公が変化を経験して新しく生まれ変わる。しかしハッピーエンドにならないことが多い。
・主人公は新たな学び、経験、自己表現を得る
・主人公は他者からもたらされた変化と格闘を続け、区切りのないまま物語が終わる
これを3幕構成にあてはめると以下のような内容
- 桃太郎は鬼退治後、暴力や略奪の快感を忘れられずにいた。自身の良心と葛藤するも、夜な夜な村の女子を手籠めにすることをやめられずにいた。
- 犬に剣術の良さを教えられた桃太郎は剣術道場を開く。鬼をも切る剣術ということで道場は大いに賑わい、桃太郎もやりがいを見出す。
- 師範として剣術の何たるかを説く中、美しい門下生と出会う。桃太郎は求愛するも激しく拒絶される。夜、門下生の家へと続く道を桃太郎はぎらぎらと光る眼で歩いていく。
5.旅と帰還

主人公はまったく異なる世界に直面、引き込まれ、試練を経験。克服して戻ってくる。感情の起伏はW型。知性や心の旅という場合もあり、恋愛モノによく使われる。
・主人公は世界の魅力を感じながらも試練を経験する
・主人公は最終的に試練を克服し、元の世界に戻ってくる
これを3幕構成にあてはめると以下のような内容
- 鬼退治で鬼ヶ島に向かった桃太郎は鬼ヶ島の美しさに取り込まれてしまう。そこで出会った鬼娘と恋に落ち、桃太郎は鬼ヶ島で生活することにした。
- 鬼の狩猟生活は美しくも残酷だった。狩猟の一環で人間を襲うことがどうしても受け入れられない桃太郎は鬼娘と別れ、一人鬼ヶ島で生活を始める。
- 農作業に励む桃太郎に鬼娘は再び惹かれていく。二人は自分たちの理想の生活を求め村へと帰り幸せな生活を送る。
6.探求型

何かを探し求めて冒険する物語。感情の起伏は逆W型。
・主人公は希望を打ち砕かれる
・主人公は何らかの形で探求の旅を終える
これを3幕構成にあてはめると以下のような内容
- なぜ鬼は人々を襲い、虐殺するのか。桃太郎はその謎を追うため、場合によっては切り捨ても覚悟して仲間と共に鬼ヶ島へ向かった。
- 鬼ヶ島には様々な植物や動物が集まっていた。そこでは人間の増加に伴う農業の弊害、害獣とされた動物の一方的な駆除について話し合われ、定期的に人間を「間引き」することが決定されていた。
- 桃太郎は生き物の言い分に納得するも鬼ヶ島にいる生き物を全滅させ、村に戻った。人々は喜び、村は大いに賑わい一大商業地区へと発展した。昔ながらの農作業しかできない桃太郎は発展する村で仕事を失い、残された数少ない里に身を潜める。
7.モンスター退治

主人公が悪役に立ち向かい幸せを取り戻す。
・主人公は立ち向かうことを余儀なくされる
・主人公は最後に自分の幸せを取り戻す
これを3幕構成にあてはめると以下のような内容
- 鬼が村へ悪さをする中、桃太郎は生まれ強靭な肉体を持った若者へと成長した。
- 鬼の村への悪さが限度を超え、桃太郎は鬼退治を決意する。
- 桃太郎は鬼を倒し、平穏な暮らしを取り戻す。
うん、桃太郎は完全にこれだね。
実際に再現したら確かに「あるある感」満載なストーリーができた
『ベストセラーコード』を読んだ時はいまいちよく理解していませんでしたが、実際に桃太郎の話を使って再現してみると、「確かにこういうストーリーあるよな」って感じのストーリーが出来ました。
ザクッと作ったお話なので粗はありますが、タイプ別の特徴を挙げてくれているため、ほとんどお話作りをしたことがない僕でも簡単にあらすじを作ることが出来ました。これは凄い発明ー。
やっぱり実際にやってみると凄く理解が進みました。もしよかったらみなさんも身近な題材でベストセラーのストーリーを作ってみてはいかがでしょうか。
コメントを残す