こんにちは!一級建築士でマンガ家のヒヅメです!
以前平成29年の一級建築士設計製図試験課題をマイクラで作るという頭がおかしい記事を書いたのですが、懲りずに平成30年「健康づくりのためのスポーツ施設」の標準解答例1を作ったので解説します!
前提条件
ここでは以下の前提条件で解説を進めていきます!
- 一級建築士設計製図試験の勉強を進めている前提とする
- 試験問題の立体的イメージを掴んでもらうことを目指す
- 数的なポイントやその年の特殊な諸条件については解説しない
- 標準解答例の図面および問題文は用意しない
※複製・配布禁止になってるから。
※試験元HPなり資格学校なりで手に入れてね!
細かくてしっかりとした勉強は総合資格なり日建学院なりTACなり独学系なり行けばいいと本当に思ってるから解説しないよ!
敷地および周辺条件

上の図は課題文に書かれている敷地図と同じ構図のものです。
見た通りこの敷地は住宅地に囲まれた場所にある学校敷地でした。それが今は校舎がカルチャーセンターに、体育館はスポーツ施設に校庭はグラウンドとして生まれ変わり、課題の敷地(元屋外プール跡地)にはスポーツ施設を建設しようとしているのです。
つまりこの敷地の各施設は一体的に運用されているということが分かります。これが読めるかどうかでこの課題の出来が大きく左右されます。

そして地盤。なかなかトリッキー。
- 屋外プール撤去部分は埋戻し土につき軟弱地盤扱い
- 地下1.5mまでは砂層につき軟弱地盤
- 地下1.5m以下は砂礫層につきしっかりとした地盤
- しかし地下2.2m以下に地下水あり
アプローチ検討
次に建築物へのアプローチを考えてみます。

敷地に隣接する道路で大きいのは東側道路です。歩道付きの大きな道路ですのでおかしくはなさそう。
さらに敷地南側には歩行者専用道路があります。旧校舎の向きから考えて、多くの通学生はこちらの道路を歩いていたんじゃないかなと想像できますね。

そして敷地北側には駐車場があります。こちらもアプローチにはできそうです。駐輪場もありますね。
ちなみに馬は孤独な建設作業が寂しくて飼ってました。

んで、最後に敷地西側。図面ではイメージしにくかったかもしれませんが、桜並木というのは通学路なんですよ。そして今も旧校舎はカルチャーセンターとして運営されているので、現在もこの桜並木が一連の施設共通のメインアプローチであるということが読めるんです!
こんなん本番できちんと読めたやつは偉いよ!!ほんと!!
でも肝心の敷地西側には桜並木があってアプローチが取りにくそうじゃないですか?そこで下図に矢印を描いたんですけど………少し桜の間隔が空いているように見えません!?

ほら!他は桜がつまっているのに、ここだけ間隔が空いているんですよ!「西側からもアプローチとれるんだよ?」とささやいているんです!なんだよそれ。
…といったところでようやく建築物の解説です。
建築物
外観

はい。完全に西側アプローチです。桜並木に面して屋外テラスを設けることで桜並木を歩く多くの利用者にとって利用しやすい配置になっていますね。
駐車場がある北側に主出入口を設置した人もいるでしょうけど、桜並木(メインアプローチ)から見にくい位置にわざわざ設置する説明性が無いと厳しいと思います。
全体プラン
各階の平面図を載せておきます。ざっとポイントだけ書いていきますので標準解答例と見合わせてみてください。
1階平面図・配置図

- プール1階プラン
この年は健康増進部門の大きすぎるボリュームをどうやってゾーニングするかがカギ - 敷地内からアプローチを取っているため、避難上必要な通路として敷地内通路を道路まで確保している
- エントランスホールを中心とした分かりやすい配置
- 機械室には専用の搬入口があってメンテナンス性に配慮している
2階平面図

- 多目的スポーツ室、キッズ用プレイルーム、更衣室を2階に配置
※比較的年少者が利用する(であろう)施設と靴の履き替えを要する更衣室を同じ階に近接して配置したパターン - 必要天井高が5mある多目的スポーツ室を2階に配置して建物全体の高さを抑え、整形な構造としたプラン
- 多目的スポーツ室を他の施設と隣接させないことで、発生する騒音が他施設に伝わらないようにするプラン
- 見学コーナーを2階に配置した視認性の良いプラン
3階平面図

- ダンススタジオ、トレーニングルーム、インストラクター控室を3階に配置
- 吹抜は各階の共用部をつなげることで、各階の雰囲気が分かるようなプラン
- 地味なポイントだけど、各階のトイレ位置が同じなのは渋い
- インストラクター控室は利用者動線と交錯しているが完全なバックヤード部門ではないせいか不問とされている
断面図

- PC梁にまたがるトップライト
- 基礎は地下水位より上の位置に配置する
- ステンレス製プール下部はマットスラブ(マット基礎)とする
※基礎に関しては次回詳しく解説します!
1階
フロント・エントランスホール

- 利用者に分かりやすい位置にフロント
- 全体が見渡せるフロント
- ゆったりと整形なエントランスホール
- 共用部とつながる効果的な吹抜け
とまあ例年通りのプラン。
カフェとコンセプトルーム


カフェとコンセプトルームはもっとも地域に開放された2施設だと条件に書いてあるので、アクセスしやすい1階に配置する。
温水プール室

プレストレストコンクリート梁による大空間は上階を設けられないためトップライトにしたプラン。
多くの受験生が迷ったであろう地下水と基礎の関係については標準解答例2の解説時にまとめてしようと思います。
2階

ホールの階段から一目で各施設が分かる明快なプラン。そこが何より大事。だって公共施設だもの。
多目的スポーツ室

「多目的」という思考停止は建築家がしちゃいけないと思う。少なくともこのプランでは共通の更衣室と同一階にすることで利用者が年少者、高齢者または多人数であるという意図が読める。
キッズ用プレイルーム

特に言うことなし。公園に向けなくてもOKってくらい。
3階

2階と同じくホールを中心とした分かりやすい配置。つまりこの年はプールを1階に置き、西側にメインアプローチをとれば楽勝という年でした。
まあそこが難しいんだけどね…
トレーニングルーム・ダンススタジオ

こちらも特記事項特になし。インストラクター控室の位置は割を食っているけど、管理側施設なので問題なし。
屋外施設

- 屋外テラスを桜並木に沿って配置し利用しやすいプラン
- 駐車場は北側を利用するため設置無し
まとめ

リゾートホテルの翌年ですが、こちらは全年齢層が利用する公共施設であると理解し分かりやすさを重視。
プール1階、多目的スポーツ室2階というボリュームが合理的なプラン。
プール、多目的スポーツ室、トレーニングルームという同一部門で大きなボリュームにどういう説明の下階別ゾーニングが出来るか。
こういったところが標準解答例1でしょうか。気になるプールの基礎部分は標準解答例2と合わせて検証することで意味が出てくると思うので次回までお待ちください!
おまけギャラリー
この年は周辺敷地を作るのがめちゃくちゃ大変だったのに解説に使ってない部分が多過ぎるのが悔しい!のでギャラリーとしてここに載せておきます。僕の努力よ成仏してください。



[…] 敷地と周辺条件は前回と同じだから前回の記事で確認してね! […]